お母さん方のご相談をうかがっていると、「甘えさせる」という言葉と
「甘い顔をする」という言葉が一緒になっていることがよくあります。
たとえば、子どもが「野菜が嫌い」だと言ったとき。
「じゃあ、残してもいいよ」と簡単に言うと、子どもに甘い顔をしている
気がするというのです。
どうも、「子どもの言いなりになる」感じがして、悔しいようです。
親の「なんでも食べる子になってほしい」という要求と、
子どもの「食べたくない」という要求がぶつかり合い、
親が子供の要求を聞き入れてしまうと、親は子どもとのケンカに負けた気分に
なるようです。
さらに、「一度子どもの要求を聞き入れると、クセになりそう」だという
思いもあるようです。そのため、子どもの要求を聞き入れてなるものか、
とバトルに発展します。
そんなときは、子育てに少しの処方箋を取り入れることをおすすめします。
親と子どものどちらが強いかを競争するのでなく、
言うことを効かないときに激しく怒るわけでもありません。
「甘えさせる」ことは大事だとわかった。
でも、下の子から目が離せず、とても上の子の甘えにつきあう余裕がない。
そんなお母さんはおおいでしょう。
子育てと家事に追われ、自分の体はすでにヘトヘト状態。
そんな体力も時間もないときに限って、「お母さん、見て!」と子どもが言う。
お母さんがのんびりしているときには、何食わぬ顔をして遊んでいるにもかかわらず。
いったい、それはなぜなのでしょうか。
子どもはお母さんが大好きで、お母さんの愛情がないと生きていけません。
それを、本能的に知っています。
「このお母さんは、ダメだな。だから隣の家の子供になろう」という発想は
ありません。
自分のお母さんが、世界でいちばん好きなのです。
2011年の東日本大震災直後、トイレットペーパーが品薄になった時期がありました。
その時は、「必要な分だけ買って、買い占めをしないようにしましょう」と言われました。
たとえて言うならば、お母さんは、そんなときに薬局に残った
ラスト一個のトイレットペーパーのようなものなのです。
あとのために残しておいたらいいのだけれど、
お母さんの愛情がなくなると生きてい行けないと感じるので、
そのラスト一個のトイレットペーパーでさえ買い占めてしまうといった感覚です。
今、お母さんの時間や心の余裕が少ないのであれば、なおのこと、
その残り少ない時間や心の余裕を奪っておきたいと思います。
お母さんが疲れているとき、時間がないとき、心の余裕がないときほど、
「お母さんの愛情を、残っている部分も全部ちょうだーい」
「多めにキープさせて」
とお母さんの愛情をむさぼるのです。
どうも子どもにとっては、お母さんは空気のようなものなので、
なくなると酸欠になって生きていけないと思うのです。
だから、お母さんが忙しくなるほど、自分が拒否されたと感じて、
激しく暴れます。
「酸素をくれー」
「今すぐ酸素マスクをもってきてくれー」
という感じですね。
「忙しいときにあえて甘えて困らせてやろう」などという魂胆は、毛頭ないのです。
「それでも忙しくて、とても甘えさせられない!」
そう思うお母さんがほとんどなのではないでしょうか。
もしも、子どもと南の島にあるリゾートホテルに遊びに行き、
掃除をする必要もなし、食事はルームサービスを利用し放題、
洗濯物もランドリーサービスを利用して、しなくてはいけない家事が一切なし…
そんな状態であれば、どこまでも子どもと遊んですごすことができるでしょう。
しかし…それは現実的ではないですね。
つまり、現実の世界では、ある程度の枠のなかで子育てを行わなければなりません。
子どもの甘えを100%受け入れることはできないのです。
子どもがいつもまでも「やってー」と言うと、「いい加減にしなさい!」と
言いたくもなるでしょう。
子どもに苛立ちや怒りを感じたときの、処方箋を紹介します。
【1】冷静にお母さんの要求を言葉で伝える
子どもには、お母さんに怒られたと感じる判断基準があります。
それは、「声の大きさ」と「口調の強さ」です。
どんなことを言われたのかというよりも、お母さんの言いかたに反応します。
大きな声を出され、強い口調で注意されたときに、自分は怒られたと感じます。
ですから、声のボリュームとトーンを落とし、冷静に伝えることが大切です。
たとえば、お母さんは夕飯の用意をいたいのに、
子どもは「もっと遊ぼう!」と言う場合。
「ねえ、晩御飯を食べたいよね。ちょっとお母さん、作ってくるわ」
と言って、台所に立ちます。
子どもが、遊んでもらえずに怒ったとしても、
「そうだよねー、もっと遊びたいよね、お母さんも遊びたいけどね」と、
独り言のようにつぶやくだけにします。
「だったら遊んで!」と言われても、「そうだよねー」と相手にしながら、
独り言を続けます。
子どもの要求を全部聞いて、何時間でも一緒に遊んだ結果、
「今日は夕飯が何も作れなかった」では、元も子もありません。
【2】子どもとおり合いをつける
子どもは、お母さんから拒否されたと感じると、酸素不足になるのと同じように、
苦しんで暴れます。
しかし、そのまま子どもを甘えさせっぱなしにしていると、
「これ以上はできないわ」
「こんなになんでも手伝っていいのかしら」と、
お母さんの心がぐしゃぐしゃになってきます。
そんなときは、子どもとおり合いをつける、絶交のタイミングです。
「お母さんが見ているから、やってごらん」
「シャツはお母さんが手伝うから、ズボンは自分でできるかな?」
と、おり合いをつけてみるのです。
「やりなさい!」と高圧的にどなってはいけません。
あえて子どもを大人と同じように扱って話してみましょう。
子育てに、休む暇はありません。
次々とやることが襲いかかってきます。
きょうだいがいれば、それぞれの子が別々の時間帯に違うことをするので、
お母さんの時間は皆無になります。
年次休暇も病気休暇も、給与も賞与も一切ありません。
それ以上にもっと足りないのは、子育て中のお母さんへの「承認」です。
子どもは、自分が認められてないと心が不安定になりますが、
これはお母さんも同じです。
これだけ身を粉にして子育てをしているのに、誰からも認められないのであれば、
お母さんだってすねてしまいます。
子育ては「やって当たり前、でも子どもの不出来は親の責任」と言われます。
本当に大変な仕事です。
さて、子どもは、お母さんになった私たちにいろんなことを考えさせてくれます。
「私は人と接することが苦手です」という人も、子育て中もそれでは密室育児になり、
あっという間にストレスいっぱいになります。
たとえ苦手でも、人と接していかなくてはなりません。
また、子育て中も今までどおりに仕事を進めたいという人は、
自分ひとりでは子育てと家事、仕事の両立で時間がなくなってしまいます。
そのため、誰かに助けを求める必要が出てきます。甘え上手になることが大切です。
子育てはたしかに大変なことではありますが、それを孤軍奮闘するから、
ストレス度合いがぐっと高くなるのです。
子どもをもったら、どうすれば自分の負担が少しでも少なくなるかを考えましょう。
ひとりで頑張ることには限界があります。
各家庭によって環境はさまざまですが、夫、または夫以外に、子育てサポーターに
なる人を積極的に探しましょう。
気軽に子育て相談ができる人、有料でもいいので気兼ねなく子どもを預かってくれる場所、
子ども連れで遠慮なく通える習いごとなど、そのレパートリーは多ければ多いほど、
お母さんのストレスが軽減します。
子どもはあなたが困難を感じたときに、
「ただひたすら頑張る以外の方法ももっと模索しなさい」と暗に教えてくれています。
子育てって奥深いのです。
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