一見似ている言葉ですが、「甘えさせる」と「甘やかす」は、まったく違うはたらきかけです。
「甘えさせる」とは
・体に触れる
・話を聞く
・子どもが自分でできることを、あえてやってあげる
という三つ。子どもが求めるならば、どこまでやってもかまいません。
いっぽう、「甘やかす」とは、
・親が先回りしてやってしまう
・なんでも買い与える
などといったことが挙げられます。甘やかす行為に共通しているのは、
「一見子どものためを思っているように見えて、実は親の都合を優先している」
ことです。
「甘えさせてばかりでいいのか」
「そんなに子ども中心になっていてもいいのだろうか」
と心配しているかたがいるかもしれませんが、
それは「甘えさせる」と「甘やかす」をこんどうしているからだと考えられます。
子どものためを思っていれば、それはすべて「甘えさせる」につながります。
「子ども中心にやっていいのか」という不安についてですが、
実際には、生活が子ども中心になることはありません。
100%子ども中心に生活していては、家事や仕事など、
大人の生活が成り立たないからです。
そして子供が二、三人いれば、自然に誰かを待たせることになります。
あくまで「できる範囲で甘えさせる」ということになります。
ともかく、「子どもを甘えさせすぎることは、案外少ない」と
思っておきましょう。
ついやってしまいがちは「甘やかす」行為は、大きく分けて二つあります。
服を着るのに時間がかかる、なかなか靴のひもを結べない…。
「もう見ていられない!」とママが先回りしてやってしまうと、
それは「甘やかす」ことになります。
「ママ、やってー」とせがまれているのだとしたら、別です。
しかし、子どもが頼んでもいないのに「見ていられない」「親がやったほうが早い」
などと大人の都合を優先して、先回りしてしまってはいけません。
これらは、子どもが自立する機会を奪うことになります。
子どもの作業時間は、幼い頃であれば、大人の2~3倍はかかります。
だから、あらかじめその時間を見込んでスケジュールを立てるのです。
幼稚園では、そのあたりの時間にうまく余裕をもたせています。
ただ、技術的に靴下がうまく履けないということであれば、
たとえば靴下をじゃばらのように小さくしてから指先にもっていく、
といったやりかたそのものをわかりやすく教えてあげる必要はあります。
子どもが泣き叫ぶから、ひとまず黙らせるために欲しがるものを買う、
祖父母が孫に気に入られようと思ってなんでも買い与える…。
これも、「甘やかす」ことです。これでは、何も我慢ができない子どもに
なっていきます。
これも、大人の都合を優先しているということです。
金額が高いおもちゃであれば、
「お誕生日に買おうね」「クリスマスプレゼントにね」と言って、我慢させます。
待つ経験をすることが、子どもには必要です。
そして、もしこのように約束したのなら、必ず買ってあげることが大事です。
子どもだからといって、約束を反故にしてはいけません。
そうやって、親自身が約束を守る姿を見せることで子供も
約束の大切さを知っていきます。
どうしても守れないときは、なぜ守れないかていねいに説明しましょう。
「今忙しくて、ゆっくり買いに行けないから待っててね」というように、
正直に説明します。
では、そう高価でない、子供用のお菓子などはどう考えたらいいでしょうか。
一切買ってはいけないのでしょうか?このあたりがママの悩みどころですよね。
おそらく、家庭によって対応が分かれるところだとは思います。
「一切お菓子を買いません」という家庭では、
お店に入る前に「お菓子はかわないよ、それでいいね」と伝えておくのが
効果的です。そして、それが守れたら、子どもを大いにほめてあげて
やってください。
ただ私は、子どもを買い物に連れて行き、お菓子を見せるだけ見せておいて
一切買わないというのも、酷なように感じます。
大人だって、あれこれを見れば欲しくなります。
そこで、金額を決めてひとり一個だけお菓子を買う方法もあります。
すべて禁止ではなく、「この範囲であれば買っていいよ」と一部分
許容するのです。
これは心の面だけでなく、経済観念を育てるうえでもよい経験になります。
たとえば小学校に入り、遠足でおやつを買う機会がやってきたとき、
自分で一切買い物をした経験がない子どもは、何をかったらいいのか
わからないことがあります。
「予算は300円まで」と言われたとき、300円でどれくらいのお菓子が
買えるのかが、わかりません。
いっぽう買い物に慣れた子どもは、同じ金額でも数が多くてたくさん
入っているお菓子を選び、さらに、それをいくつまで買うことができるのか、
パパっと計算できるわけです。
だから、ひとり80円までとか、100円までというように子どもに
予算を話しておいて、さらに予算内でお菓子を選べるような経験を
させるといいと思います。
さらに、お金の価値が分かると良いので、一日10円、20円の
お小遣い制にしたり、お手伝いを一つしたら10円のお駄賃をもらえる、
という経験もいいでしょう。その際、お駄賃の金額は上限を決めておくことを
おすすめします。
そんな経験をしながら、子どもにお金の大切さや、自分で買い物をする
経験を教えていくといいでしょう。それでも、買い物のたびにお菓子代が
多くなって嫌だというママは、宅配や通販などを利用することを
おすすめします。手数料がかかりますが、子どもを買い物に連れて行くと、
費用も時間ももっとかさんでしまいます。
どちらもうまく利用していくといいでしょう。
買い物に行って、「買って、買って」と泣き叫ぶ。
誕生日プレゼントを買ったばかりなのに、一週間後には、
もう次のおもちゃを買って欲しいとねだって暴れる。
あまりにも物を欲しがるときには、もともともっているガマンする力が
少ない場合も予想されますが、まずは、今貯められそうな「ココロ貯金」を
貯めてみましょう。
あまりにも物欲が強い場合は、本当に欲しいのは物ではなく、親の愛情
かもしれません。
「甘やかす」だけの育て方をされた子どもは、いくらお金を使って
物をかってもらっても、心は満たされません。
安心感も満足感ももつことができず、不満感情だけがずっと続きます。
だから、次々と親の手を焼かせることをするのです。
私は毎日子育て電話相談をしています、ココロ貯金が十分に貯まっている
子供は、たくさん物を買ってくれとは言いません。心が安定しているからです。
欲しがるからとりあえず物を買い与える、というのはやめて、
「プラスのかかわり」を増やしていきましょう。
心が安定すると、「買って」と泣き叫ぶことは減っていきます。
おばあちゃん世代がよく言う「甘えさせる」というのは、
「甘やかす」とか「甘い顔をする」という意味合いが強いように思います。
なんでも子どもの言うとおりにする、欲しい物を買い与える、
または「甘えさせ」の抱っこやおんぶをいつまでもするのがいけない、
ということでしょう。
「甘えさせる」と「甘やかす」の違いは前述したとおり。
しかし、おばあちゃん世代はどうしても勘違いしてしまいがちです。
どう対応したらよいのでしょうか。
まず、おばあちゃんが「甘えさせるとダメになる」と言うのは、
子どものよくない姿が目につくからです。
「ママのやりかたが悪いからこうなった」と思っているのでしょう。
つまり子どもの様子がよければ、言われることは少ないということです。
「甘えさせるとダメになる」と言われたら、
子どもが荒れていないかどうか、確認する機会をもらったと思いましょう。
また、そういわれたときは、
「そうかもしれません、気をつけます」
とだけ言っておくといいでしょう。もしくは、
「園(学校)の先生から、『子どもが甘えてくるときは、
いくつになっても抱っこもおんぶもしてあげてください』と言われています」
と、「先生の教え」として伝える方法もあります。
嫁や娘が言う意見は聞き入れないおばあちゃんも、
先生が言うことであれば、少しは聞く耳をもってくれるかもしれません。
おばあちゃんには、子育てを無事にやり遂げたという自負がありますから、
おばあちゃんの考えを否定することは得策ではありません。
「でも…」と否定するのではなく、ただ「そうかもしれません」とだけ
言ってすませるのが、賢いやり方です。
おばあちゃんは、そのまたママ(あなたのおばあちゃんですね)に
どのように育てられていたかを、孫育ての判断基準にしています。
その世代になると、おそらく子どもの数は、今の子育て世代よりも
ずっと多いはずです。五人、六人、七人というきょうだいも珍しくはありません。
電化製品もない時代で、お店ももちろん今ほどはなかったでしょう。
そんな不便ななか農作業などに追われながら同時に子育てを
していますから、今よりもよほど怒って子育てをしていた
可能性があります。
反面、子どもの人数が多ければ、一人当たりの「怒られ率」も
少なかったと思われます。たまには見逃されることもあったでしょうし、
子どもが「他のきょうだいが怒られているから、自分は同じことを
しないようにしよう」と知恵を働かせることもあったでしょう。
今の子供は、三人いれば多いほうですから、そんな状態で子どもの数が
多い世代と同じ勢いで怒っていては、その怒りは一極集中していまいます。
そんな意味でも、日ごろから子どもを甘えさせて、ココロ貯金を貯め、
自己肯定感が高い子どもに育てていくといいのです。
「時代が違う」と言ってしまえばそれまでですが、
おばあちゃん世代と現代の違いを理解してもらえれば、一番いいのです。
もちろん、なんでも子どもの言うとおりにすることは、望ましくはありません。
第一、現実的に不可能です。
こどもからの理不尽な要求については、ただ単に子どもを怒るのではなく、
理由を言ってきかせましょう。
十分にココロ貯金が貯まってくれば、子どもは理不尽な要求をしなくなり、
言って聞かせればわかるようになっていきます。
ココロ貯金は、遠回りのようで、子どものココロがいちばん安定する方法です。
おばあちゃんにもその大切さを教えてあげて、
一緒にココロ貯金に励むことができれば、それが理想の姿です。