体験談
学校に行けなくなったサッカー少年
乾いた音声が流れ続けるYouTube。
その画面をぼうっと眺めている息子。
明るくサッカーが大好きだった息子は、中学2年の終わりから学校に行けなくなりました。
原因はお友達とのトラブル。
終日無気力に、YouTubeかテレビを眺めているだけ。 全身で放っているのは「話しかけてくれるな」というオーラ。
不登校の原因はわかっていても、どのように関わればよいのか全くわかりませんでした。
ただ、昼夜逆転して健康を損ねてしまうのはこわい。 ある晩、覚悟を決めて携帯を取り上げると、恐ろしい剣幕で怒り狂いました。
テレビを消されて気持ちが荒ぶり、サーキュレーターを蹴り飛ばしてドアに穴が空けたことも。
——これは、やってはいけないヤツだ。
携帯は返却。
ハッパをかけようとガミガミと叱ってみたこともありましたが効果なし。
よい結果を生まない関わりは肌で感じて理解しましたが、元気な息子に戻す術がわかりませんでした。
動かないので食事の量も減っていき、心配は募るばかり。
少し前までは毎日サッカーをして、お腹ペコペコで帰ってきていたのに……。
わたしの子育てが間違っていたのかもしれない。
明るかった子が変わってしまうと、家の中は冷え冷えとして火が消えてしまったようでした。

【お母さんのプロフィール】
大学1年生の息子さんのお母さん。中2の終わりに学校に行けなくなった息子さんは、中3の6~7月まで不登校に。その後もメンタルの浮き沈みがつづいたが、ココロ貯金で乗りきる。子育て心理学カウンセラー養成講座を受講したのは息子さんが中3の冬。
2つの出会い
わが家の危機を救ってくれたのは、2つの幸運な出会いでした。
ひとつめの幸運は、スクールカウンセラーさんとの出会い。
とても頼りになる先生で、学校に通えなくなった子ども達の居場所を作ってくれていたのです。息子もそこに通うようになり、先生は息子の話を真剣に聴いてくださいました。そして学校の先生と連携して、お友達とのトラブルを解決してくださったのです。こうして中学3年の7月には、息子は学校に戻ることができました。
もうひとつの幸運は、同じ年の秋にわたしがココロ貯金と出会ったこと。
子育て心理学カウンセラー養成講座で本格的に学びました。
学校に戻れたとはいえ、まだまだ息子の情緒は不安定。
相変わらず接し方にとまどうばかりのわたしでしたが、ココロ貯金を学んだことで「何をすべきか」がわかり、落ち着いて子どもに関われるようになったのです。
ココロ貯金で変わったこと
「しっかり勉強してこの子を変えなければ!」
意気込んで講座を受講しましたが、変わったのは息子ではなくわたしの意識でした。
「息子を変える」のではなく、自分にできること(ココロ貯金)をするだけでいいのだと、ガチガチだった肩の力が抜けました。
すると不思議なことに、ごく自然に息子が変わっていったのです。
復学しても足が遠のいていたサッカークラブに再び通うようになり、最後までつづけることができました。勉強面でも「高校には行きたくない」と言っていたのに、「隣町の高校を受験したい」と言い出すまでに。
実は中高一貫校に通っていたので、簡単な試験を受けるだけで進級できる環境でした。ましてや半年間学校を休んだブランクがあったので「チャレンジャーだな」と、とても驚きました。
季節は10月。1月の試験まで4カ月もありません。
けれども息子は猛勉強をはじめたのです。
——わたしにできるのは、ココロ貯金だけ。
アドバイスなどは一切せずに、息子の好物を作って腹貯金。
話を聴きながらサッカーで疲れた体をマッサージするのも、気持ちがゆるむようでした。
顔を真っ赤にして帰ってきた寒い日は
「顔赤いけれど、寒かった中よくがんばったね」
「サッカーしながら、勉強もよくがんばっているね」
名前を呼んで、ねぎらいの言葉をかけました。
やる気のアップダウンはありましたが、正月返上で塾にも通い、見事合格!
わが子ながらあっぱれでした。
ところが。
「楽しい、楽しい」と言っていた高校生活は1~2カ月後には終わりをつげ、ココロ貯金をたっぷり与えつづけないと、息切れしてしまうような事態が待っていたのです。
対人関係のつまずき
隣町の学校だったこともあり、クラスには知っている子が一人か二人。
もともと対人関係に不器用な息子です。
周りの子や先輩となかなかうまくいかず緊張がつづいたことから、部活に遅刻したり、授業中に寝てしまったり。監督や先生に目をつけられる機会が増えてしまったのです。
客観的に見ると注意せざるを得ないと思うのですが、本人は納得していない様子。
「自分ばっかり注意される」
とよく愚痴っていました。
毎日毎日、家で文句を聴きながら、好きなものを食べさせて。
すると翌日には、なんだかんだと言いながらも、起きて学校に行きました。
ただ、ふだんはそんな調子でしたが「本気でヤバイ」と感じたときには、想像以上の力を発揮することもありました。1、2学期の成績が散々だった息子は、12月にこっぴどく先生に怒られて帰ってきました。3学期の試験は1回だけ。
そうなると、いきなり猛勉強をはじめます。成績もV字回復して
「がんばったね。もう大丈夫!」
と先生のお墨付きをいただきました。
するとまたふっと力が抜けてトーンダウン……というように、ふり幅の大きい息子のメンタルを、ココロ貯金で支えつづけた高校生活でした。
息子の今
現在、息子は大学1年生。一人暮らしをしています。
高校2年生までは「家事はイヤだから家から通う」といっていたのに、3年になり「一人暮らし、できそうな気がする」と言い出しました。少しずつ自信がついていったのかもしれません。
大学生活は楽しいようで、サッカー部の練習や試合で土日も忙しく過ごしています。
「どんなご飯を食べているの?」
と聞くと、煮魚、ポトフ……など、けっこう豪華な写真が送られてきます。
最初の頃はカレー、カレー、カレー、の連続でしたが、いつの間にかレシピが増えていきました。
もともとユニフォームの洗濯は自分でしていたので、洗濯はお手のもの。
部屋もきれいに掃除されていて、意外にも生活がうまく回っているのです。
幸せじんわり
子どもにあげていたつもりのココロ貯金は、実は自分にもたまっていたのだと気づきました。
無理なく貯金をつづけていくと、子どもの情緒が安定します。話をしてくれるようになるので気持ちが通じ合い、以前にはなかった安心感があります。
子どもの気持ちの充実も、はっきりと感じられるようになりました。
こんなうれしいことってあるでしょうか。
また、ありのままの息子を認められるようになった今の自分を誇らしく思うのです。
息子は大丈夫。幸せな未来が待ってるよ。
自分を責めてばかりいた過去のわたしに、教えてあげたい今があります。
◎お母さんが実践したココロ貯金◎
・アドバイスはせずに腹貯金
・話を聴きながらマッサージ
・名前を呼んでねぎらいの言葉がけ
・思うところがあってもひたすら聴く

