体験談
◆遠ざかっていく学校生活
小学6年のときのあるトラブルをきっかけに、登校をしぶるようになった長男。
どうしたものかと悩んでいるうちに、次第に学校へ行く回数が減っていきました。
好転するきっかけがないまま時が流れ、中学生になると大きな環境の変化についていけず、事態はますます深刻になっていったのです。
朝、起きられない。夜は眠れず、明け方までゲームに没頭。
活力がなく、常に横になっている状態……。
人を寄せつけない雰囲気で表情も暗く、話しかけても反応がなくなりました。
心も体も、まるで地中深くにもぐってしまったかのよう。
もはや「学校に行ってみよう」などと声をかけられる段階ではなく、心配でたまりませんでした。
——どうすればいい? どう抜け出したらいいんだろう。
焦りは強まるものの突破口が見いだせず、出口のないトンネルを手探りでさまようような毎日でした。

【お母さんのプロフィール】
4人のお子さんをもつワーキングマザー。現在高校2年生の長男さんは、小学6年生のときのあるトラブルから登校をしぶりだし、中学に入り不登校に。田本さんが子育て心理学カウンセラー養成講座を受講したのは、長男さんが中学1年生の頃。
◆引き金は、やさしさと正義感
登校しぶりの引き金になったのは、小学6年生のときのあるトラブル。
いじめを見過ごせず、困っている子を助けようとした長男は気持ちがたかぶり、少し行き過ぎた行動をとってしまったのです。
根っこにある正義感には気づいてもらえず、行き過ぎた行動だけをフォーカスされ、先生にも誤解されてしまいました。
長男はちょうど思春期の入り口にいて、誰かに認めてもらいたいと願っていた時期でした。
この出来事は、彼の中に「大人や社会への不信感」という影を落とし、学校から足を遠ざけてしまったのです。
◆別物の「不登校」
実は、長男の前に次男でも不登校を経験していました。
ですから耐性はあったはずなのですが、形がまったく違っていたのです。
次男は、わたしに感情をぶつけてきました。大変でしたがある意味わかりやすく、コミュニケーションがとれたといえばとれたのです。
しかし、長男は違いました。
怒るでも泣くでもなく静かに怒りと悲しみを蓄えて、目に見えない憤りが心の中でどんどん渦を巻き、大きくうねっているように感じました。
元々おとなしい性格で語彙の発達がゆっくりだった長男は、感情をうまく言葉にできなかったのかもしれません。伝えられない想いが心の奥に蓄積し、体すら動かせないほど重くなってしまったのだと思います。
一体どうすればいいの?
どんなに悩んでもなす術がなく、長男の元気がどんどん失われていくのをただ見つめることしかできませんでした。母親としての自信もすっかり失い、暗闇の中でもがく日々が続きました。
◆「ココロ貯金」との出会い
とにかくできることを見つけたい。
手探りで情報を集めていたときに出会ったのが、「ココロ貯金」という言葉でした。
Instagramで東ちひろ先生のアカウントにたどりつくと「思春期が専門です」という投稿があり、わたしの心にスッと光が差し込んだのです。
——これだ!
思春期の子どもには、“心に寄り添う”ことが何より大切なんだ。
まさにわたしが求めていたものだと感じ、子育て心理学カウンセラー養成講座の募集がはじまったときは、迷う間もなく申し込みボタンを押していました。
◆愛情が伝わっていなかった!?
「ココロ貯金」を学んで、ハッと気づいたことがありました。
わたしの愛情は長男に届いているのかな?
もしかすると、伝わっていないのかもしれない。
「信用できない大人」のグループにひとまとめにされているんじゃない?
とにかく、大切に想っている気持ちを伝えたい。
そう考えて、“大好き”を伝える「触れる」ココロ貯金を、毎日できる限り実践しようと決めました。
朝起きたとき、通りすがりに、長男が寝ているときでさえ、できるだけスキンシップ。
さりげなく肩に手を置く。
名前を呼んで、おやつを手渡す。
少し照れくさそうにしている長男に毎日たくさん触れて、名前を呼び続けました。
◆あふれ出した言葉
「俺、このままでもいいんだ」
今のままの自分愛されている——そう伝わったとき、長男の心の中にゆっくりと自信が芽生えはじめたように感じました。
語彙が少なかった長男は、自分の中にストレスを溜め込みやすかったのだと思います。
すべてをひとりで背負ってしまい、苦しくなっていたのでしょう。
でも「ココロ貯金」を実践するうちに——
少しずつ少しずつ言葉が出てくるようになり、2~3ヶ月経った頃には、今までの沈黙が嘘のように会話が増えていました。言葉が増えていくにつれ、長男の心がどんどん解きほぐされていくのがわかりました。
暗闇にいた日々は少しずつ遠ざかり、光が差しはじめたのです。
◆少しずつ、少しずつ——変化のきざし
最初は本当に小さな一歩。
まるで、ちょっとずつ高いハードルを跳べるようになっていく感覚で——。
最初に変わったのは、目つきでした。
覇気がなかった瞳に力が宿り、まんまるく、くりっと可愛らしくなってきたのです。
「そう、これが本当のあなたよね」
そう思いました。
そして、何か月も合うことがなかった視線が交わるようになってきたのです。
今まで「絶対に行かない」と拒んでいた外出の誘いにときどき応じるようになり、家族と一緒に出かける機会も徐々に増え……。
「俺は外に出ないから」と心を閉ざしていた彼が、ほんの少し外の世界へ足を踏み出した——。
小さな変化が、わたしにとっては奇跡のように思えました。
◆自己解決
通信制高校への進学を決めて面接の練習をしていたときのこと。
さらなる変化が訪れました。長男自ら“過去の自分”を振り返りはじめたのです。
「あのときの俺、すごく認めてもらいたかったんだよね」
ぽつりぽつりと話し出す彼。
「そうだよね」
心の中で何度もうなずきながら、わたしは彼の様子に見入っていました。
そして——
「結局は巻き込まれただけだよね、俺」
長男は、最終的に自己解決を果たしたのです!
——ああ、彼はもう、自分の力で歩きはじめている。
わたしは静かな感動に包まれていました。
小学校時代のあの出来事を心の中でひとつひとつ整理して、受けとめられた長男。
以後、まるで羽が生えたかのように、急成長していきました。
◆「聞いて、聞いて!」と話しかけてくれる日々
かつて、言葉を閉ざしていた長男が——
今では話したいことがあふれ出し、うれしそうに話しかけてきます。
「聞いて、聞いて! 今日こんなことがあったんだ!」
「友達がこんな風に言うんだよ」
「ああ、喋ってる……!」
胸がいっぱいになります。あの暗闇にいた日々が、まるで嘘のようです。
自信を取り戻した長男はお友達も増え、自分から誘って出かけるなど積極的に仲間と関わるようになりました。
今は、通信制高校の2年生。
起き上がれなかった頃の彼とは別人になり、ようやく「本来の自分」を生きはじめた気がするのです。
◆自分で決めた道を、自分の力で歩む
「俺も、普通高校に行けたのにな」
あるとき、長男がつぶやきました。
「うん、きっと行けたと思うよ。でもね、今の学校でいろんな人と関わりながら、自分らしく生きてる。それって、本当にすごいことじゃない?」
わたしは、心から言いました。
普通高校が“正解”というわけではありません。
長男が通う通信制高校では、スクーリング・テスト・レポートの三本柱を自分で計画し、管理しながら進めていかなければなりません。すべては、自分次第。
「絶対3年で卒業する」
長男はそう宣言し、今も目標に向かって着実に歩き続けています。
レポートの提出も出席も、すべて問題なく順調。
誰に言われるでもなく、自分の頭で考えて歩む姿に、ただただ感動するばかりです。
◆暗闇の先で気づいた、かけがえのない今
——あのとき、ココロ貯金に出会えて本当によかった!
今、心から思います。
親と話さなくなる年頃だと聞きますが、わが家では毎日、自然に会話が弾んでいます。
長男も機嫌よく、笑顔で過ごす毎日です。
そしてわたし自身も、母親としての自信を取り戻すことができました。
長男の元気がないときは自分の力不足に落ち込み、長男の成長にあわせて、わたしの自己肯定感も上がっていきました。
絶望の中でもがいた時期があったからこそ「あたりまえの日常」が尊く、しみじみと幸せをかみしめる毎日です。
暗闇をさまよう過去のわたしへ。
——大丈夫! もうすぐ“心を育てる”方法に出会うから。
暗闇の先に光に満ちた未来があると、伝えてあげたい気持ちです。
◎お母さんが実践したココロ貯金◎
・“大好き”を伝えるスキンシップ
・長男の言葉をそのまま聴く

