体験談
■急変
その日は突然訪れました。
息子が小学2年生になって間もない普通の朝。
学校へ送り出そうと玄関に出た瞬間、息子の全身の力がふにゃふにゃっと抜け、くずれ落ちるようにしゃがみこんでしまったのです。そのままの体勢で泣きだす息子。
どんな声をかけても石のように倒れたまま、立ち上がることができませんでした。
今思えば、クラス替えで仲のよいお友達と離れてしまったのが、原因だったかもしれません。
お友達がいない。誰も話しかけてくれない。自分からは行けない。休み時間はひとりぼっち……。
学校でかくれんぼをしたとき、ずっと見つけてもらえなかったことがあったそうです。先生にも友達にも誰にも気づいてもらえず、「ひとりぼっち」の孤立感が深まってしまったのかもしれません。

【お母さんのプロフィール】
小学3年生の長男くん、小学6年生の長女さんのお母さん。長男くんが小2の4月、突然学校に行け
ない状態に。子育て心理学カウンセラー養成講座を受講したのは、長男くんが小2の秋。
■息子を置いて
息子の足は学校から遠のき、ゴールデンウィーク前には一切行けなくなってしまいました。
——明るく元気な子だったのに、何がおこってしまったの?
学校へ行こうとすると全身の力が抜けてしまう息子に、「行こうよ、行こうよ」と励ましたり、「何が嫌なの?」と原因をきいてみたり。
そのうちにイライラしてきて、「理由がないんだったら行けるじゃん」と腕を引っぱりますが、反応がありません。
わたしは勤めているので、電車に乗り遅れないかと気が急きます。仕事に穴はあけられず、泣く泣く息子を置いて会社へ向かう日々でした。
■食べない飲まない
息子のことが心配で会社から電話をしても、応答がなく不安がつのりました。
ご飯も食べず、水分すらとっていない様子の息子。
どれくらい飲んだかわかるように水筒を準備していましたが、まったく減っていないのでした。お菓子もフルーツも食べず、たた横になっているだけ。目で見てわかるほど、やせ細っていきました。
先生が電話で様子をたずねてくださっても、
「すみません、今職場にいますので」
としか応えられない自分が情けなく、落ち込むばかり。
——どうしたら、いいんだろう。
——なぜ、こうなってしまったの?
不安ばかりが広がっていきました。
■ココロ貯金のシャワー
「ココロ貯金」に出会ったのはそんな頃。藁をもつかむ思いで子育て心理学カウンセラー養成講座に申し込み、秋口から受講できることになりました。1回2時間の講座でたっぷりとココロ貯金のシャワーを浴び、通勤時にはいただいた動画で勉強します。
——そうだそうだ! 今日もがんばろう。
不思議と勇気がわきました。
ある日、講座で習ったように息子のふくらはぎをさすってあげると、気持ちよさそうな顔をしました。
「ママ、もっとさすって」
ご飯はいらない。お風呂にも入らない。無気力になり、何も求めなくなっていた息子の「〇〇して」
という言葉は、本当にうれしく感じました。それからは時間があれば、息子のふくらはぎを、なでなで。
マッサージを受ける息子は、何とも言えない穏やかな表情をしていました。
■先生達の協力
マッサージや承認を続けていくと、10 月には放課後登校ができるようになりました。
先生が昇降口まで来て、明るく声をかけてくださいます。調子がよければ教室まで行き、
「今日は何時におきたの?」「ごはんは食べた?」「次いつ会える?」
など、少しだけ会話して帰ってきます。
また、とても親身になってくださる先生で、ほとんど学校に行けなかった1学期分の通知表をいただけたのです。多くは斜線が入っていましたが、数箇所だけ印がついていました。息子はとてもうれしかったようです。2学期の最終日は「通知表をもらうんだ」と言って、ラスト 30 分だけ学校に行きました。
「Aくんは次の順番だから、ここで立ってるんだよ」
クラスの子が教えてくれます。一人ずつ廊下に出て、先生から一言いただいて通知表を受け取るスタイルのようで、恐らく上手にほめてくださったのでしょう。ニコニコしながら戻ってきました。
「ママ、成績ついてたよ」
限られた教科だけでしたが、誇らしげに報告してくれました。教室の後ろで見ていたわたしは、あふれる涙を止められず、マスクで顔を隠しました。
「Aくんが来てクラス全員そろったから、写真をとりましょう」
担任の先生が写真をとっていると、学内を巡回していた校⾧先生と教頭先生が「それはいいな、先生 もとっていいかな」などと言いながら加わり、「やりましたね」という表情で、わたしに目配せしまし た。
■Aくんはクラスメイト
3学期も放課後登校を続けていましたが、通知表を受け取った日の登校が後押しになり、たまに時間 内にも行けるようになりました。
ありがたかったのは、担任の先生が
「Aくんはお家で勉強しています。でも、みんなのクラスの一員です。いつ学校に来てもおかしくありません」
といつも言い続けてくださったこと。
おかげでたまに学校に行くと、クラスの子達がごく自然に、温かく迎えてくれました。
「あ、Aくん来た」
「席はここだよ」
子ども達のやさしさに救われて、教室の後ろで泣きました。
3月には週1~2回、4時間目から学校に行き、給食を食べて帰れるようになりました。
「3年生になったら、俺、学校に行く」
担任の先生に宣言したそうです。
■「配慮してもらう」のはよい? 悪い?
「クラス替えについて、学校に配慮してもらって何が悪いんですか。いいじゃないですか、行けるようになれば」
講座で相談すると、ちひろ先生は背中を押してくださいました。ところが夫は、
「社会に出たらどんな状況でも、たくましく生きなければならない。配慮をお願いするのは、ちがうと 思う」
という意見。夫の意見ももっともな部分があり散々悩みましたが、勇気を出して相談に行きました。 「どうぞ、どうぞ」
校⾧先生は温かく、じっと話を聴いてくださいました。
「この場で『必ずいい先生をつけます』というお約束はできません。ですが、状況はよくわかりましたし、お気持ちもわかりました」
思いやりにあふれた言葉が心にしみました。
■始業式の日
4月。3年生になった最初の登校日、息子は普通に学校に行きました。
「朝から登校しました。色々ご対応いただき、本当にありがとうございました」 学校にお礼の電話をして担任の先生にご挨拶していると、「少しお待ちください」と言われ校⾧先生 に替わりました。
「Aさん、校⾧です。やっと言える日が来ました。指導力抜群の担任をつけましたから、安心してください!」
熱いものがこみあげました。
■息子の変貌
息子は別人になりました。
朝は自分で起きて、服選んで 鼻歌をうたいながら身支度します。わたしが送らなくても、登校班の お友達と学校に行きます。
表情も生き生きとして、いつもニコニコ。
土日にお友達と遊びたいと思えば、「遊ぼ?」と自分から声をかけ、家に招いて遊びます。
「宿題を終わらせてからお風呂に入る」
「あと 30 分やったらゲームはやめる」
宿題もお風呂もゲームの終わりも、自分で決めてできるようになりました。ココロ貯金と先生方のご協力には感謝しかありません。
■もうひとつの変化
ふくらはぎのマッサージは、寝る前の習慣になりました。承認や声がけも、忘れず心がけています。
講座を受ける前は何をしたらよいのかわからず、ネットで調べても答えは出ず、その場その場で漠然と対処するしかなかったのですが、今は「わたしができること」が明確になりました。
実は、ココロ貯金で変わったのは、息子だけではありませんでした。
殺伐としていた夫婦仲がよくなったのです。
以前は会話がほとんどなく、夫もわたしも息子の不登校に引っぱられて、ウツっぽくなっていました。 息子だけではなく、自然に夫のココロ貯金もためていたらしく、今では家族みんながよく笑います。
さらに職場でも、「あ、これココロ貯金をあげた方がいいな」と感じることが増えたのです。
「あちゃー、これは貯金不足かな」とわかるので、頼まれたわけではないのですが、どんどんココロ貯 金を配っています^^
◎お母さんが実践したココロ貯金◎
・ふくらはぎのマッサージ
・承認や声がけ
・学校の先生との連携プレー

