コロナ禍ではじまった不登校
「なんで義務教育なんてあるんだろう」
息子に登校しぶりの兆候が出はじめたのは、コロナが蔓延し、学校が分散登校になった頃でした。社会全体に不安感が広がっていたあの頃。具体的なきっかけはなく、ただ突然、本人のテンションが急降下していったのです。
「中学にも進みたくない」
「部活は帰宅部がいい」
息子の口から出てくるのは、ネガティブな言葉ばかり。
分散登校が終わって通常日課がはじまると登校しぶりに拍車がかかり、夏休み前には少し学校をお休みしました。夏休み明けはいい感じでスタートできたのですが、しばらくすると学校に全く行かなくなってしまいました。
【お母さんのプロフィール】
中学2年生の男の子のお母さん。
小学5年生で登校しぶりがはじまり、その後不登校に。
子育て心理学カウンセラー養成講座を受講したのは、長男が5年生の12月。
「見守る」って何?
子どもが楽しく過ごせていないと、親の気持ちも晴れません。友人と話していても頭のどこかに息子のことがあり、心から笑えない日々がつづきました。
どうにか息子にやる気をおこさせたいと、つい小言を言ってしまう。すると息子が反抗的な態度をとる。「その態度はないでしょう」とこちらも注意したくなる。
悪循環でした。好転するようにと心をくだいても、息子にはうまく伝わりません。しまいには「何も聞きたくない」と、布団をかぶって丸まってしまうことも日常茶飯事。
子どもが不登校になったときの教えとして
「親の考えを、子どもに押し付けるのは良くない」
だとか、
「子どもを変えようとする前に、自分が変わりましょう」
などという言葉をよく耳にします。では、家にいる母親は一体何をしたらよいのでしょう。学校に行かなくなった子どもがそばにいるのに、ただ放っておけというのでしょうか。
「私の何がいけないの? “見守る”ってどういうこと?」
社会から責められているような気がして、泣き叫びたい気持ちでした。
わたしにも、できること
子育て心理学カウンセラー養成講座の受講を決めたのは、孤立無援だったから。事態は悪化するばかりで、ひとりでは解決できる気がしなかったのです。
まず救われたのは、ちひろ先生が
「どうにかして学校に行かせたいと、親が思うのはあたりまえですよ」
と認めてくださったこと。
「普通、普通」
笑いとばしてくださって、本当に心が軽くなりました。
そして、「見守る」期間に何をするのか、具体的にできることがあるとわかったのが、一番の収穫でした。
「忙しくて話を聴けないときも、相槌だけは大きくうちましょう」
ものすごく、実践的なアドバイスですよね。
ゆっくりコツコツ
以前から息子の話を聴くようには心がけていたのですが、「相槌」までは気がまわりませんでした。講座で習ったとおりに、「うんうん」「なるほど」とうなずきながら聴くと、息子に伝わるように感じました。
他にも、名前を呼んだり、肩や腕に触れたり、小さな工夫を心がけます。息子がどんな状態でも「ココロ貯金をためる」という目標ができ、いつしかわたしの支柱が作られていきました。
ただ、少ししんどかったのは、同期生のお子さんに比べてココロ貯金の効果が表れるのが遅かったこと。すぐに効果が出る子と、なかなか出ない子がいます。ゼロからイチに到達するまでの過程は、すごく長く感じました。
それでも、「その調子、その調子」とちひろ先生に励まされ、淡々とコツコツとがんばることができました。
3年後
あれから3年。息子は中学2年生になり、休むことなく学校に通っています。コツコツとつづけたココロ貯金が、自己肯定感を育てたのでしょう。ひとたび小さな花が咲くと、効果は加速していくようです。
6年生では渋々ながらも学校に行くようになり、中学入学の頃には登校しぶりは消えていました。今では親も子も、あの頃の記憶が薄れつつあります。部活動はソフトテニス部。自由参加の朝練にも、楽しそうに通っています。
不登校になって、当時習っていた野球やスイミングは辞めてしまいました。中学で何かはじめてくれたらと願っていたので、うれしい限りです。
学校に来ていない子が何人かいるようなので、
「声をかけてあげたら?」
と言ってみたら、
「行きたくなければ、無理して行かなくてもいいんだよ」
と、穏やかな応えが返ってきました。
今は思春期まっただ中なのですが、5年生のときの方が扱いづらかった気がします。何か言うと鋭い言葉が返ってきて、触れるだけでやけどしそうだったあの頃。
ココロ貯金を学べて本当によかったと、感謝の気持ちでいっぱいです。
まあ、いいか
息子が不登校になり立ち尽くしていたわたしは、ココロ貯金に救われました。
バタバタと忙しい日々の中でもできること。ココロ貯金を学んで細かいことが気にならなくなり、ガミガミ言わなくなりました。合言葉は、「まあ、いっか」。
「3年前よりも、表情が柔らかくなられましたね」
久しぶりにお会いしたちひろ先生にそう言われ、なんだかくすぐったく、誇らしく、うれしい気持ちになったのです。
お母さんが実践したココロ貯金
・相槌をうちながら「聴く」
・言葉がけの際に名前を呼ぶ
・肩や腕に触れる
・なかなか効果が表れなくても、コツコツ&淡々とココロ貯金